事例紹介

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島根県江津市様 × 西日本旅客鉄道(JR西日本)様

CASE STUDY / 公共・交通

島根県江津市様 × 西日本旅客鉄道(JR西日本)様

「オンデマンド交通・MaaS実証事業」への取り組み

島根県江津市様×JR西日本様 オンデマンド交通・MaaS実証事業
▶ 事例動画 AIオンデマンド交通が切り拓く地方都市の未来|島根県江津市 × JR西日本

AIオンデマンド交通が切り拓く地方都市の未来|島根県江津市 × JR西日本

路線バスの減便が進む地方都市で、地域の移動をどう再設計したのか。本事例の詳細は動画でもご覧いただけます。

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西日本旅客鉄道株式会社(大阪府大阪市、長谷川一明社長)(以下、JR西日本)では、2024年12月より島根県江津市で「オンデマンド交通・MaaS実証事業」にクリプトコンサルティングの支援のもと取り組んだ。江津市では、公共交通の縮小、人口減少などが深刻化する中、生活利便性の低下や、観光客の移動手段の不足、地域経済の縮小が発生し、移動手段の確保などの取り組みが求められている。そのような中JR西日本ではインフラサービスのプラットフォーマーとして、将来世代の豊かな暮らしの実現につながる「既存の公共交通に留まらない」持続可能な社会の構築に貢献している。

地域課題 ―人口減少と高齢化で揺らぐ、地域の交通と暮らし―

島根県江津市は、中国地方の日本海側に位置する自然豊かなまちだ。だが、全国的な傾向と同様に少子高齢化の波が押し寄せており、令和2年度時点での高齢化率は39.2%。地域の魅力が十分に市内外へ伝わっていないこともあり、特に若年層の人口流出が続いている。税収は減少し、経済規模も徐々に縮小。まちの活力は年々失われつつある。

高齢化が進む中で、免許を自主返納する高齢者も増えており、交通弱者が増加。一方で、利用者減により公共交通の維持が難しくなっており、市内のバス・鉄道では減便や路線廃止が進んでいる。たとえば、石見交通の波積線では、令和6年4月から土日祝日の運行が廃止された。市内のタクシー事業者における課題も深刻で、複数の事業者で運転手の平均年齢が60歳を超えている。担い手不足が進めば、公共交通の維持そのものが困難になり、地域の移動手段はさらに限られていく。

課題解決に向けたクリプトコンサルティングの支援

  • 地域の移動課題に応じたオンデマンド運行エリア・乗降ポイントの設計支援
  • 江津市および関係機関との実務的な調整支援(ヒアリング、会議同席、文書作成など)
  • 利用者アンケートの設計と集計・分析によるニーズ把握
  • 実証実験のWBS(タスク整理)やスケジュール策定の補助
  • デジタル定期券などの施策設計の支援
  • 経費整理や補助金申請支援に向けた資料整備 など
現地訪問を複数回行い、地域の実情を踏まえたうえで、JR西日本の皆さまが江津市と円滑に協議を進められるよう、縁の下で支援を行ってきた。

支援を通じて得られた成果

こうした取り組みを通じて、オンデマンド交通の実証に必要な地元合意形成や制度設計の前提条件が整い、運行に関する定量・定性データも蓄積されつつある。アンケート結果からは、移動手段の確保が生活の利便性や安心感の向上に寄与することも確認され、今後の制度化や本格導入に向けた足がかりが見えてきた。JR西日本と江津市による地域交通の再構築の取り組みに対して、私たちとしても微力ながら引き続き現場に寄り添い、伴走していきたいと考えている。

本特集では、実際に、このプロジェクトはどのように立ち上がり、現場ではどんな手応えや気づきがあったのか。江津市、JR西日本それぞれの立場から、実証事業の背景と手応えを語っていただいた。

インタビュー

江津市地域振興課 千代延明様(左から2番目)/西日本旅客鉄道株式会社 デジタルソリューション本部WESTER-X事業部 片岡祐太様(左から3番目)/同 戦略企画(地域ソリューション)森岡愛祐美様(右)/クリプトコンサルティング ディレクター 木田聖矢(左)

木田本日は2024年12月より、江津市、JR西日本、クリプトコンサルティングで取り組んでいる「AIオンデマンド交通」について、江津市の千代延様、JR西日本の片岡様、同じくJR西日本の森岡様にお話をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

「AIオンデマンド交通」導入の背景

江津市地域振興課 千代延明様

今回江津市で「AIオンデマンド交通」を導入するに至った背景について教えていただけますか?

千代延様地域の高齢化が進む中で、交通手段が限られていることが背景にありました。市内を走る路線バスは廃止や減便が進んでおり、今後も深刻化していくことが考えられます。持続可能な交通手段としてルートが柔軟に変更でき、効率化が期待できるAIオンデマンド交通が最適だと考えました。

JR西日本様はいかがでしょうか?

片岡様私たちの主たる事業は鉄道事業ですが、地域課題を解決すべく鉄道以外のソリューションもいろいろ提案させていただいています。この度は、江津市さんが新たな方策として、新しい持続可能な交通網を模索されているということをお伺いしまして、今回、オンデマンド交通を江津市さんの方にご提案させていただき、採択いただいたというところです。

「AIオンデマンド交通」現在の運行形態

AIオンデマンド交通は現状どのような運行形態で実施されているのでしょうか。特に車両や運行時間についてお聞かせいただけますか?

千代延様現在は試験運転という形で、ドライバーを含めて7人乗りの乗用車を使い、年末年始を除いて朝8時から夕方5時まで運行しています。運行に関しては地域のタクシー事業者に市から委託をして行っています。

森岡様利用時には予約が必須となります。予約の際にはスマートフォンアプリまたは電話予約で受付をしています。利用者層としてはやはり高齢者が多いので、電話での受付は必須と感じております。

「AIオンデマンド交通」サービス導入前の障壁や不安

西日本旅客鉄道株式会社 デジタルソリューション本部WESTER-X事業部 片岡祐太様

「AIオンデマンド交通」のサービスの導入を決めるまでに特に大きな障壁になったことや、不安に思われたことはございましたか?

千代延様運行を行う地域で住民説明会を行ったのですが、やはり住民のみなさまからの理解が得られるかというところが大きな不安でした。しかし、取り組みに対しては好意的なコメントが多く、とても安心いたしました。

片岡様この住民説明会にはJR西日本も同席させていただきまして、直接住民のみなさまの感触やご意見を伺うことができました。我々としても住民の皆様からAIオンデマンド交通について運行時間の問い合わせなど、活発に議論をいただきまして、その場で非常にたくさんのご意見をいただいたので非常に感謝しております。

「AIオンデマンド交通」理解を得るために工夫した点

西日本旅客鉄道株式会社 デジタルソリューション本部戦略企画(地域ソリューション)森岡愛祐美様

サービス導入にあたって、住民や地域の事業者から理解を得るために工夫された点はございましたか?

千代延様今回実証の地域が江津東部の5地区で行われました。そんな中、我々は5地区にあるそれぞれのコミュニティ交流センターに赴き、住民説明会を実施させていただきました。また、地域内を走る複数のタクシー事業者とも事前に調整を行いました。

森岡様AIオンデマンド交通は「乗り合い」という事実を除けば、普通のタクシー運行と変わりませんので、地域内を走る運行会社から承認をいただくことは非常に重要になっております。弊社では他の地域におきましても同様の取り組みをさせていただいておりますが、他の地域と比較しても江津市様では運行会社からも非常に好意的なコメントをいただいております。

「AIオンデマンド交通」サービス開始後の反響

サービスの開始後住民や地域社会からの反応はいかがでしたか?

千代延様移動が便利になったという声が多く寄せられた一方、今回の実証実験では、江津市東部地域に限られているため、市の中心に位置する総合病院へ行きたいという利用者からの声は大きかったです。

片岡様現在は実証実験ということで車も1台に限られていますので、エリアを含めて限られたものとなっておりますけれども、今お声としていただいたような、「もっと中心部へ行きたい」というご要望や、「もっと便利に利用したい」といったお声があることは私たちも認識しておりますので、今後は江津市さんと検討を進め、より良い地域の交通体系にしていきたいと思っているところでございます。

「AIオンデマンド交通」印象深かった反響

クリプトコンサルティング ディレクター 木田聖矢

地域の方から寄せられた声で印象深かったものを教えていただけますか?

千代延様ご利用いただいた高齢者の方々から、「これまでバス停まで歩くのが大変だったけど、家の前まで来てくれるから便利になった」というコメントをいただきました。このようなお声をいただき、我々が支援したかった層にサービスが行き届いていることを実感いたしました。

森岡様このようなコメントは、我々としても非常にうれしく思います。弊社では電話予約を受け付ける際に、「こんなところまで来てくれるの?」といったような意見をいただくことができ非常にうれしい限りです。

「AIオンデマンド交通」地域経済への影響

今回は2か月間の非常に短期間の実証ではございますが、移動の手段が増えたことで観光や飲食等の地域経済には影響がございましたか?

千代延様まだ運行を開始したばかりということもあり、観光や飲食等地域経済への影響まではデータとして目に見える形では取得できていないのが現状です。ただ、今後はそういったデータも活用して地域経済の活性化につながるようなプロジェクトにしていきたいと考えています。

片岡様このオンデマンド交通で高齢者の方を中心に移動の利便性が高まることによって観光や商業施設に訪れてみようという動機がプラスで生まれれば、我々としてもうれしいなと思っております。また、JR西日本といたしましては、これまでも観光や商業施設を巡るようなスタンプラリーを実施したりしており、こちらから需要を喚起するような取り組みもさせていただいておりますので、今後、こうしたオンデマンド交通の需要を喚起するような施策を組み合わせて誘引をはかっていければ、尚良いというふうに思っているところでございます。

「AIオンデマンド交通」サービスを根付かせるための次の施策

このサービスをさらに根づかせるために、次に考えている施策はございますか?

千代延様利便性の向上と利用促進の2点を考えています。まず、利便性の向上につきましては、既存のバス停情報、また、この度のAIオンデマンド交通の乗降ポイント、これらについてのデータを活用して目的地への最適なルートが検索できるようなそういったシステムが構築できたらなと考えています。また、利用促進の面につきましては、アプリ予約や便利な使い方など、スマートフォンを使って予約をすることがなかなか難しい、スマホの操作に慣れていない高齢者を対象にしたスマートフォン教室のような取り組みを進めて、利用促進をはかっていきたいなというふうに考えております。

森岡様特に利便性の向上に関しては市内の中心地に行くには、JRの駅、あるいはバス停まで行き、そこで乗り換えていただく必要があります。ですので、家から直接行くとなると利便性が向上するのではと思っております。一方では、公共交通をしっかりと利用していただくことも必要かなとも考えております。

「AIオンデマンド交通」今後の地域の未来

今後このプロジェクトをすすめていくにあたって、どのような地域の未来を描いていきたいと考えておられますか?

千代延様10年先まで持続可能な地域公共交通の実現が目標です。地域住民、交通事業者、行政が三位一体となって移動サービスを提供していくことができる地域社会を実現していけたらなと思っています。

片岡様JR西日本といたしましても、持続可能な地域社会づくりに貢献していきたいと考えています。その際にはJR西日本だけがWINになる関係性ではなく、JR西日本、地域の皆さま、行政が三位一体となって、WINになるようなそんな関係性をつくってまいりたいと思っております。そのためにも我々はさまざまなソリューションを持っておりますが、地域課題をしっかりとヒアリングさせていただき、地域課題にマッチするようなソリューションをこれからも提案し続けてまいりたいと思っています。

木田これからも江津市、JR西日本、クリプトコンサルティングが一体となって地域課題の解決にコミットしてまいりたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

(2025年2月18日 JR西日本本社にて取材)

WRITER
木田 聖矢
クリプトコンサルティング ディレクター
新規事業の企画から事業化、DXによる業務効率化、営業戦略の立案まで、幅広い領域のコンサルティング経験がある。近年は特に、新規事業の事業計画策定と立ち上げ、自治体向けのスマートシティ構想策定・実装や、企業向けのスマートシティビジネス戦略立案・新サービス企画・個別案件支援など、自治体と企業の両面の支援を主導。
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